京劇といえば、学生時代に妹と一緒に三国志の「長坂破」を見たのが最初。
趙雲子龍役、葉金援さんの立ち回り、声、たたずまい、演技のかっこよさったらなかった。
あまりに面白くて、見る予定がなかった「群英会」と「借東風」のチケットもその場で買い足して、3回見に行きました。・・こちらはこちらで、美丈夫周瑜のメラメラっぷりや、諸葛亮のハラ芸が良かったのよね~。
カーテンコールでは花束も渡した!
あれから20年以上・・
群馬で京劇を見られるなんて。
久々のチャンスに迷わず行ってきました。
金銭豹
西遊記より。
紅梅山に住む妖怪、金銭豹と悟空が戦う立ち回りの演目。
この妖怪、強い・・んだろうけど、ぜんぜん強そうじゃない。顔もなんだかユーモラス。
「I字バランス」でぴたっと静止して見得切るとか、開脚ジャンプとか、指で鉛筆回すのと同じ要領で槍を回すとか・・
凄いけど、アピールのしどころが微妙にズレてる感じが面白い。(笑)
孫悟空のほうは当然、ぴょんぴょんと宙返りだの側転だのしてました。
一度、陸上ダブルジャンプを横跳びでやってて、おもわず拍手しましたわ。
太真外伝(太宗と楊貴妃の外伝)
梅蘭芳のために書き下ろされた演目という話・・なんだけど・・
隣のおばちゃん、始まって1分で居眠り始めたよ。(笑)
私自身は眠くなるほどじゃなかったけど、楊貴妃が幼いような印象だったのと、あまりにあっけなく太宗と再会できたので、ちょっと拍子抜けした感じ。
もうちょっとドキドキさせてくれるような演技が見たかったなというのが正直なところです。
鎖麟嚢
日本でいう世話物的な。
富豪の娘が洪水に遭って乳母に身を落とし、かつて嫁入りの道すがら財産を施した娘と再会する・・という数奇な恩返し物語なんだけど、これが良かった。
手元のあらすじを見る限り、かなり端折ってる感じではありましたが、それでも内容はよく伝わったし、年のせいですかね、ちょっと涙が出てしまいましたよ。
歌はスピーカーで増幅してたので、音響バランスの問題もあったのか、序盤はちょっと聞きにくかった。
でも、雨宿りシーンの後半、音楽がテンポアップしてからだんだん良くなったような。
特に終盤、主人公が乳母になって、「お坊ちゃま」が寝ている間に身の上を嘆く歌はよかった。
歌の聴きどころに対して拍手する人がほとんどいなかったのはちと残念。
主人公も良かったけど、お母さん役の人も素晴らしい声でしたね。
一度、北京のどこかのホテルで毎晩やってる公演を見に行ったことがあるけど、ああいうのは外国人向けの軽い寄せ集めで、全然面白くないのよね。
今回は地方公演だし、たいした演目はないんじゃないかとナメてかかっていただけに、最後に見た「鎖麟嚢」は、「京劇見たぜ」感を満足させてくれる演目で、観に行ってよかったなあと思いました。
また機会があるといいなあ。
備忘録として
24年前に見たキャストの演技を。
「群英会」
葉少蘭の周瑜。
赤壁のアイドル・・いや、三国志のアイドルっつったら、周瑜でしょう。
それまでにも、人形劇や漫画、小説、映画やドラマやゲームで幾度となく接していた周瑜、京劇を見て感動したのは、彼の頭に「ぴょ~んとした羽」がついていたこと。(翎子というらしい。)
この弾力と優雅さが、いかにも血気さかんな「美丈夫」周瑜らしいアイテムだなと。
「借東風」」張学津さん(2012年没)の孔明。一体いつのだろ。
葉金援さんの趙雲は見つからなかったので、彼が出演している中国のトークショー。
7分ごろから、ポロシャツにキャップ姿の素顔で演技を披露するという驚きの展開にぶったまげる。
ポロシャツはともかく、なぜキャップ。(笑)
そして28分30秒ごろから、1993年の東京公演・・そう。私が見た、あの公演のことを話してくれている!
「外国人に京劇を見てもらうには言葉だけでなく文化的にもハードルがあるが、日本人だけは、三国志や水滸伝に熱心なので、それが比較的容易だった。
その時毎回同じ席で観劇していた学生が、その後も何度も見に来てくれて交流を続けている」
以上、超端折った意訳。
ほんとうに、あのときの彼の演技は素晴らしかったし、それに対する熱狂もすごいものでした。
主役ではない「赤壁」でも、登場するだけで客席が沸く。(笑)
ちなみに、この話の流れで紹介されているNHKの映像(日本語字幕入り)は、そのときの公演ではないです。残念っ。
私が「長坂破」を見たとき、葉さんは45歳くらい。
そんな年齢とは思えない、まるで20代のような若々しさで、役柄としては「忠義の兵」だけれども、それだけじゃなく、女心をつかむ色気がありました。
そろそろ70歳というお年ながら、今も現役みたいだし、今度来日したら絶対行く。