フリー、良かったですねえ。
そりゃミスはあったし、後半スピードなかったけど、それでも自分を追い詰めすぎないおおらかさがあり。
欲張らず、身を投げ出すような、分け与えるような演技(競技プロでの)を見たのは、昨年のN杯SEIMEIのコレオシークエンス以来だったなと思う。
昨シーズン終わりごろ、次はもっと等身大の表現を見てみたい・・プレシーズンだから無理かもだけど・・ってどっかに書いた気がする。
だからこのプロが発表されたとは、おおっ来たか!、と思った一方、こりゃ難しい曲だな、二年越しの挑戦だな、仕上がるまでにグダ演技やドヤ演技を何度も見せられるんだろな・・と思った・・(笑)。
でも覚悟をきめて、よちよちの子供を見るような気持ちで、必要以上にDISることもなく(笑)見守ってきたのよ。(←偉そうだけどホントの気持ち)
それだけに、プログラムに魂が入って、完成度はともかく作品として独り立ちしてきた今回の演技がどんなに嬉しかったか。
(もちろん、本人は演技後にミスを全力で反省しただろうけど。)
本人の努力もさることながら、デカ君やフェイ君の存在も大きかったんじゃないかと思う。
自分だけで背負っているんじゃなくて、同じものを共有する仲間がいるんだっていう実感が、彼に心の余裕を作ったんじゃないかと。
昨年のGPFでフェルナンデスが200点越えして会場が沸いたときは、「これから俺が滑んだぞっ」と思ってジャンプを見せつけたと言ってたけども、今回の羽生氏はことさら自分をアピールしたりせず、むしろデカ君への声援を共有するように、場になじんだ雰囲気でリンクに出ていったのがとても印象的だった。
本人も優勝インタビューで言っていたけども、ああ成長したなあと思ったものです。
ファイナルはもっとギリギリに自分を追い込んできそうだし、宿敵Pちゃん、同門とはいえ因縁のフェルナンデス、日本人とはいえじりじり差をつめてきたしょーま、そして本気でヤバいポテンシャルのネイサン・・という最強メンバーたちと、デカ君とのようなシンパシーを得られるかは未知数(笑)。
でも、今回の経験が彼の人間的成長を促したと信じたい。
心の状態さえ充実していれば、彼は絶対、いい演技をする。
ちょっとだけ、エレメンツについて。
まあ、さんざん褒めといてなんだけど、後半の、曲が変わってから先は、もうちょっと今後の仕上がりを待ちたいかな・・
久石譲は、日本人作曲家だし、日本的なものを表現してるけども、音楽の実体は「西洋音楽」なんですよ。
今年久石譲を弾いたときに先生に指摘されたんだけども、たらりたらりとした日本的な空気に流されずに、前へ前へ行く、「西洋音楽的な拍感」を意識して弾かないと、だらけたものになってしまう。
このプログラム、ステップのところは4/4で、後半の曲は6/8拍子(たぶん)なんだけど、このリズム変化がまだ掴みきれてないような感じがちょっとするのね・・
歌詞もないし、強いリズムもないけど、実はショパンやパリ散と同じ6/8拍子(たぶんw)だということを意識的に聴けたら、ぐっと洗練されるのではと・・・僻地ブログから念を送りますよ。
でも、ステップの部分はすばらしい!
アウフタクトの拍感を、音楽というよりも、たぶん歌詞にのせて捉えているんだろうな。
それが結果的に音楽的な推進力になっているし、「歌」が聞こえてくるようなフレーズ感もあるし、今回はそこに、会場との一体感とか謙虚さが加わって、ほんとに涙が出るような、感動的なステップだった。
一瞬ガニ股イーグルが挟まって、「また何か追加してる(笑)・・」っていう新鮮さも良かった。
してまた、延々と続いたステップの最後にいきなり繰り出す3Fの美しいことといったら。
「3回転なんて、へへん!」と見せびらかしたいんだろうけど(笑)、これは意地も見得も超えて、純粋に美しいなと思う。
ハビもステップに埋めたジャンプが上手いし。
しょーまはステップからの4F、ネイサンはステップからの4Fにコンビネーションまでつけられる。
でも、羽生氏の長大なステップからの3Fは、技巧を全く感じさせない美しさで、ほんとに突き抜けてる。
音楽の長い長いクレッシェンドの坂道の最後に、一瞬の途切れもなく跳ぶのよね。
ステップとジャンプの間だけじゃなく、その前のステップの最中からエネルギーの漏電が全くなくて、ジャンプが跳びあがった空中で初めて解放される。
それも、音楽的に。
彼の超絶技巧は、やりすぎ感が出ちゃうこともあるけども、この3Fはほんと、よくぞやった、と思うわ・・。
やりすぎといえば。
後半三連続ジャンプの入りの、逆回転ぐるぐるが戻ってきた。
面白いけど、あれはSEIMEIだから「三番叟」のイメージが生きたので・・
このプロでそこまでする必要は・・・どうよ・・(笑)
それからもうひとつ良かったところ。
4-3コンビネーションに入る前の休憩が、前回まではいかにも「休憩してます」って感じで手持無沙汰だったけど、今回は目をつぶって思いに浸る的な小芝居を投入、しっかり間を持たせてました。
惜しむらくは、カメラが近すぎて全体イメージがわからなかったこと。
そう、今大会はカメラワークが良くなかったです。
生だから編集できない難しさがあるでしょうけど。
去年の担当者は出世してどこかへ転勤しちゃったのかなあ。