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Channel: 映画・海外ドラマ 覚え書き
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FAOI神戸 BS放送にて 羽生氏の「春よこい」

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ブラボー。

こういうものがくるとは、実は少しも予想してなかった・・
曲名と衣装の画像から、もっとJポップみありありの、彼お得意のベタプロを想像していて・・
Jポップは、あんまり好きじゃないけど、それはそれとしてきっといいものが見られるんだろうなと思ってた。

そしたら・・原曲こそJポップだけど、ぜんぜんそういう類のものじゃなかった。
ピアノとスケーターが相手の動きと音を読みながら「間合い」をはかるセッションというか。
「読む」といってもいわゆる「空気を読む」というようなものじゃなくて、緊張感をもってお互いに前に出ていきつつ、絶妙な距離感で引っ張り合ったり呼応し合ったりする真剣勝負。
ものすごく力強くてライブ感があって、まさに羽生氏の真骨頂だったと思う。

衣装にピンクが入ってたけど、演技自体に赤みは感じなかったかな・・
印象としては、「レクイエム」の形に「SEIMEI」の色彩感が混ざったような、シンプルで男っぽいイメージ。
・・だからこそ逆に、ピンクの入った優美な衣装だったのかな?
先週見た長野の凝ったホプレガの照明もよかったけども、今回は、白いスポットライトだけのシンプルな演出で、このプロの男っぽさと、ピアノとの間に生まれる緊張感を引き立てていたと思う。


これを見ながら、羽生氏はよくぞ「SEIMEI」に出会えたな、と偉そうに思った。今更だけど。
ソチオリンピックの頃は、彼の演技が時々繰り出す直線的な鋭さを、「バレエ的でない=洗練されてない」と受け取った人はたくさんいたと思うし、彼自身もそれはわかってたと思う。
でも「SEIMEI」を通して日本の古典音楽や演劇とつながったとき、彼は自分の鋭さとか気迫とかいうものを、もっと根拠のある「日本の美意識」として肯定的に解釈することができたんじゃないかと、なんとなく思う。
今回のプロも、その延長にあるものなんじゃないかな・・印象はちょっと違うかもしれないけど。


ディレイドアクセルはもうすっかり彼のパートナーになったのかな。
4回転で鳴らしてきた彼が1回転半をトレードマークにするとか、逆に胸アツだったりする。
回転が音楽にぴったり合ってて見事だと思った。

ハイドロが異様に低いのはなんの挑戦だろうww
・・いや、意味はたぶん伝わってる・・たぶん。
だけど、フィナーレで左手すごく痛そうにしてたなと思って(笑)
冒頭の3Loはちょっとタイミングがズレちゃったけど、入りの左右のターンからはじまって、着氷までぴたりと合わせるつもりだったんだろうと思った。
あの複雑なターンのおかげなのかもしれないけど、ループジャンプがあれほど自然にハマるプロは今までになかったと思うので、新潟でどうなるか、思いっきり期待してみる。
最後のグリッサンドに合わせてポジション変化するスピンもいいな。


「バラ1」と同じで、あまり観客を意識しない、内向きなプロで、ここ数年彼が目指していたところからまた少し原点回帰したのかなあと思った。
以前からずっと主張してるけど(べつに主張する必要はないんだけど)私はこういうプロのほうが好き。
もちろん、内容によっては、彼のいう観客との「コネクト」っていうのも重要だと思うんだけど、このプロに関していえば、そうじゃなく、ピアノとの一対一の対話に耳を傾けたいというか、そこで繰り広げられているものを目撃したい。
一挙一動にキャーキャー声援を送ってる人もいたけど、まあ、それもアリだとは思うんだけど、
「あ、観客のことはとりあえずほっといて、気にしないで続けてください」
と言いたくなる場面がちょいちょいあったかな。(爆)
とかいってて、いざ新潟に行ったら自分がいちばんキャーキャー言っちゃうかもしれないんだけどさ。
(いやそれはない。)

ウィルソンプロだという噂だけど、Faoiのあとも使うんだろうか。
ちょっと気になってYoutubeで時間を見てみたんだけど、実はぴったりSPに使える2分35秒なんだよね・・
ま、まさかね。(笑

この曲である必要はないんだけども、これからもこういう、何かを演じるのではなくて音楽との会話だけがあるような、そぎ落とされたプロをもっと見続けたいなと思った。
彼の得意なことはたくさんあるけど、たぶん、これこそ「彼にしかできないこと」だと思うから。

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ボーカル入りではなかったけど、ここでいきなり「春よ来い」の歌詞について。

今の今まで「遠き春よ」は未来の春のことだと思っていたんだけど、ちゃんと読んでみたら遠い過去、という意味だった。(それにしても文体適当だなこの歌詞は・・)

意訳:「沈丁花の香りをかぐと、別れた(亡くなった)人と過ごした春のことが思い出され、自分がこれから歩む道のことを心の中でその人に相談する。
その返事を待っても来ないのはわかってるし、自分は一人、運命に流されるように生きているけれど、迷いながらいつか自分が出す答えこそが、自分を愛してくれたその人からの返事なのだと信じている。」


まったくそのとおりだと、人生折り返し地点を過ぎて身に染みて思う今日この頃であります。


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3時間半にわたる放送。
最初は放送を見ていたんだけど、朝の4時半までかかることに途中で気づいて(遅)途中で断念した。
長いので全部見るのはちょっと大変だったけど(笑)、でもいいショーでした。


中でも双璧はランビ様と羽生氏だった。この2人は別格。
まあ・・いつもそうかもしれないんだけど、今回は特にそう思った。

たとえばテサモエは、スケートそのものはとびぬけて上手かった。
サフマソの演技力もすばらしかった。
でも、ランビ様と羽生氏は、もはやひとつのプログラムを見せるという次元じゃないと思う・・

たとえばランビ様は、フィギュアの「技」という個々の現象ではなくて、それが複合したときにどんな表現の可能性を秘めているのかということを、ヨーロッパ的な美意識で追求しつづけていて、それがどんどん深まっているような気がする。
羽生氏は、フィギュアでいう音楽解釈とか音ハメといったような、振り付けやノウハウのレベルではなくて、「いかに自分自身の音楽をするか」という、演奏家の次元で音楽を体現している気がする。



プル様は、今回はすっかりサーシャの保護者だったな(笑)。
先日能楽師の先生とも話したけども、自分が演じるよりも息子の初舞台のほうが緊張するらしい。

そのサーシャに軽くあしらわれて、羽生氏は楽しそうだった。

なんか、わかるような気がするな。

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