このプロいいわ・・リピとまらんわ・・
前回の記事に、そういえば音楽について書くのを忘れたと思うので、改めて。
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この曲は、元歌の「春よ来い」のAメロとBメロをばっさりカットして、前奏とサビだけを使って、そこにピアノのアドリブパートを加え、ABCABの三部形式にシンプルにまとめたもの。
それをピアノ一本で演奏する潔さは、サビをまるまるカットした「バラ1」に通じるものがあるかもしれない。(笑)
コード進行は、AメロBメロをカットした結果、ひたすらF G Am (移調済)の繰り返し。
これは「レクイエム」と同じでして、このコードが続くと出口のないせつなさ重苦しさが漂う感じになる。
「レクイエム」の続編的な意図もあるのかなと思う。
ただ、このアレンジでは、8小節のメロディーごとに、「Am」(短調)からCを半音上げて「A」(長調)に移る動きを入れてあるので、ほんの少しづつだけども段階を積み重ねながら希望が見えてくる。
原曲の「春よ来い」のリフレインの部分の終わりのなさ(カラオケで絶望的になるやつ)は感じない。
というわけで、「レクイエム」とどこか似ていて、でも常に光が見えている気がするのは、このコード進行が理由だと思う。
終盤には「C」のコード・・つまり「答え」も見えるしね。
羽生氏が指揮者のように右手を振って低い「C」の音を引き出すのが、個人的にはツボ。
ああ、自分で答えを出したんだな、という感じもするし、私は「SEIMEI」の冒頭4Sの助走前の、太鼓に合わせた振り付けを思い出して、あのときの「いくぞ!」という緊張と高揚がよみがえった。
で、そこから大きなディレイド1Aを跳ぶというところが、またぐっとくる。
そのあとイナバウアーにさしかかるところでいきなり「D」の和音になって歌が終わるんだけど、これはジャズのコード進行なのかな?(よくわかんない)
ただ、私の耳には律音階の「D」・・わかりやすくいえば「君が代」の最後の音・・に聞こえましたとさ。
そして、締めにジャズっぽくひと暴れしたあと、最後の最後は綺麗に「C」で終わる。
冒頭の、Aメロの振り付けが、後半のAメロでも繰り返されるのも面白いと思う。
同じ振りだけども、冒頭の演技はスローで再生される過去の思い出みたいで、センチメンタルでふわっと軽い。
後半の演技は、最初は冒頭とシンクロしているんだけど、だんだん熱を帯びて力強くなっていく。
その演技の違いが、ピアノ伴奏の変化によって引き出されているのか、または演技に引かれて演奏が変化しているのか、というほどの力の釣り合いも見どころではないかと。
特にAメロ終盤、冒頭の風に舞うようなツイズルの軽さと、後半の、重低音の響く中での低いハイドロとの対比は面白い。
そこからイナバウアーまでの技の畳みかけとか、「クレイジー」のラストを彷彿とさせるような、ピアノのグリッサンドを視覚化したような最後のスピンはもう、羽生氏らしさ全開というか、男っぽいカタルシスがあって、個人的にはかなり好き。
そしてパワー全開になりながらも、けっしてピアノをおろそかにせず、ちゃんと間合いをはかって共鳴しているところに、ここ数年での成長を感じたりして感慨深い。
イナバウアーのポジションが二段階になっていて、その時だけ「ちらっ」と観客のほうに目線を向けるのも、じらしがきいて、実はけっこう好き。(笑)
以下、ここまで書いたことを図式にすると、こんな感じ
Aメロ (ステップ1)(ツイズル)(Aの和音)
Bメロ (ステップ2)(3Lo)(Aの和音)
Cメロ (小休止)(スピン)(Aの和音)
A'メロ (ステップ1)(ハイドロ)(Aの和音)
B'メロ (ステップ3)(Cの和音)(ディレイド1A)(Dの和音)(イナバウアー)
コーダ (スピン)(Cの和音)
見どころはなんといっても、転機となる低いハイドロだなあ。
ハイドロ自体もいいんだけども、その直前にほんの少しピアノがスピードを上げるところがあって、それに呼ばれるようにスピードを上げてハイドロの助走に入る、そのピアノとの対話が個人的には好き。
異様なほどのハイドロの低さにどんな意味があるのかは・・まあ、私は氷を通した過去との対話といったようなものを感じたんだけども、今回の演技は洗練されていて、あまり「見て見て!」と押し出してくるものがなくて、ひょっとしたら、単に限界に挑戦しただけかもしれないとも思ったりする。(笑)
確かなのは、この技をきっかけに、羽生氏は笑顔を見せる・・ということかもしれないな。